「知らないと人生を10倍損するお金のしくみ」
<誰でも分かる金融用語・金融商品辞典>Vol.30
自筆証書遺言のしくみをわかりやすく解説
相続が発生する前にやるべき事。
どちらも大事ですが、今やるべき事。
それが、遺言書の作成です。
自筆証書遺言とは
「自筆証書遺言」とは自分の亡き後の財産を誰に引き継ぐのかを、全文を自分で書く遺言の事。
(民法968条)
3つの遺言の種類
そもそも、遺言には3つの種類(やり方)があります。
1.自筆証書遺言
2020年7月10日から「自筆証書遺言の保管制度」が始まりました。
2.公正証書遺言
3.秘密証書遺言
2、3については、改めて、このブログでご案内をさせて頂きます。
自筆証書遺言の5つの要件
自筆証書遺言は書けばいい、という簡単なものではありません。
民法で規定する要件を満たさなければ、無効になる場合があります。
全文を自分で書く
つまり、遺言の内容全てを、自筆で書く事です。
しかし、2019年1月13日に民法が改正になりました。
それにより、自筆証書遺言の作成も、下記のように変更になりました。
財産目録は自筆ではなく、パソコンやワープロで作成しても大丈夫です。
しかし、本文までワープロで書いたり、日付と氏名が自筆でない場合は無効になりますのでご注意下さい。
日付けも自署
日付けも、大事な用件です。
例えば2018年6月5日、平成30年6月5日、というように正しく記載する事が求められております。
無効となる例として
■2018年6月吉日
■2018年6月
つまり、日にちが特定できない場合は、無効になります。
氏名も自署
当たり前ではありますが、誰が書いたのか、誰の遺言なのかを明らかにする必要があります。
尚、氏名は通称名でも認められています。
尚、民法の第975条に共同遺言の禁止があります。
遺言は、二人以上の者が同一の証書ですることができない。
つまり、遺言は1人で書く!
押印
いわゆる印鑑なんですが、基本的には実印でも認印でも大丈夫です。
但し、この押印については、実に多くの裁判事例があるのですが、ほんの一部だけ紹介をさせて頂きます。
■自筆証書遺言における押印は指印で足りる。
判H元.2.16、判H元.6.20、判H元6.23
■花押は認めがたい。
判H28.6.3
■押印を欠く自筆証書は無効
東京地判H12.9.19
■封筒のみの押印を認めた判例
最判H6.6.24,東京高判H18.10.25
尚、詳しくは、弁護士、行政書士に確認をお願い致します。
加除その他の変更
もし、遺言を書いて間違えてしまった場合です。その場合は
「遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ変更の場所に印を押さなければ」なりません。
つまり、訂正方法を間違えると、訂正した部分が無効になる可能性があります。
ですので、間違えた場合は、もう一度書き直す事が懸命です。
自筆証書遺言のメリットとは
大きく3つあります。
1.手軽に書ける。
2.費用がかからない。
3.誰にも内緒にできる。
自筆証書遺言のデメリットとは
メリット以上に大事な事がデメリットです。
誰にも気づかれない可能性がある
せっかく、書き上げた遺言書。
しかし、それが、遺族に発見されなければ、効力は生じません。
また、火事で燃えてしまったり、紛失してしまえば全く意味がありません。
ですので、どこに保管するのかが、大事なポイントになります。
無効になる可能性が高い
先程の5つの要件。
1つでも不備があれば、無効になります。
また、最近、認知症になられる方も増えております。
遺言を書いた日に、既に認知症で判断能力がない、と判断されれば、せっかく書き上げた遺言書が無効になる可能性は高いのです。
なぜか?
法的効力のある遺言をするには、遺言能力が必要なのです。
認知症が進行し、判断能力のない状態で書いた遺言は、原則として、遺言能力がある、とは認められません。
まとめ
このように、自筆証書遺言には、様々なメリット、デメリットはありますが、それでも「自筆証書遺言」を選択する場合の注意点を書かせて頂きます。
1.改めて、5つの要件を確認する事。
2.書き直しは何度でもできますので、その際「日付けの新しい遺言書」が有効になります。
3.遺言書の保管場所は、家族の誰かに知らせておくべきです。
4.自筆証書遺言は、発見後、勝手に開ける事はできません。
家庭裁判所の検認が必要になります。
もし、勝手に開けてしまうと、5万円以下の過料の制裁が課されますので、ご注意下さい。
[民法1005条]~過料~
前条の規定により遺言書を提出することを怠り、その検認を経ないで遺言を執行し、又は家庭裁判所以外においてその開封をした者は、5万円以下の過料に処する。
明日は、「公正証書遺言」です。
本日も、最後までお読み頂き、誠にありがとうございました。
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