『知らないと人生を10倍損するお金のしくみ』Vol.128
地震保険のしくみをわかりやすく解説します
このたびの北海道胆振東部地震で被災されました皆様には謹んでお見舞い申し上げます。
言葉だけが先行して、中々中味が理解されていないのが「地震保険」
知らないと損どころのお話しではありません。
本日は「地震保険」について、実際の営業現場、事故現場の体験を通しての真実をお伝えさせて頂きます。
まずは、ポイントを理解しましょう
1.建物の修理金額は補償されません。
実は、この部分が一番誤解されております。
では、なぜ補償しないのか??
地震保険の目的は
被災者の方々の生活の安定に寄与すること
「地震保険に関する法律」に基づいて運営されています。
つまり、地震保険は、
建物の復旧を想定しておりません
併せて、政府と民間の損害保険会社の共同運営で、しくみは全国一律です。
2.地震保険は単独では加入できません。
建物か家財とセットでの契約になります。
3.地震保険の支払い方法は、地震保険金額の一定割合です。
①全 損:100%
②大半損:60%
③小半損:30%
④一部損: 5%
⑤無責:つまりお支払いできない場合もあります
*2016年12月31日以前保険始期の契約では
①全 損:100%
②半 損: 50%
③一部損: 5%
4.地震保険で設定できる保険金額は、
火災保険金額の50%が上限になります。
つまり、全損しても同じ規模の家は購入できません。
5.地震保険は、原則鑑定人の立会い調査を行い、その場で支払いが決まります。
6.地震保険に加入できるのは、居住用建物です。
*つまり、事業用建物は原則、加入できません。
*尚、地震保険とは別枠で、各保険会社が独自に法人向けの地震保険を準備しております。
但し、引受基準もあり、限定された物件になります。
例えば、
■鉄筋鉄骨コンクリート造、鉄骨造で木造ではない。
■昭和56年6月1日以降建築の、新耐震基準を満たした建物。
*各保険会社により、基準は違います。
実際の鑑定現場
実際に震災の現場を見せて頂くと、被災者の方は、損害の箇所を詳しくご説明して頂けます。
ところが、鑑定人が見るポイントは決まっているのです。
ずばり、主要構造部なんです。
つまり、基礎・軸組(柱)・屋根・外壁
従って、給排水設備などの付属物だけの損害であれば、保険金の支払対象にはなりません。
家財の認定基準
まずは、家財については、地震保険金額の10%以上の損害がなければ、支払いの対象にはなりません。
しかし、この10%の考え方が独特で、家財の購入金額は関係ないのです。
その上で、実は、複雑な認定基準があります。
まず、5つの分類があります。
①食器陶磁器
②電気器具類
③家具類
④見回品その他
⑤衣類寝具類
そして、①~⑤の中にはそれぞれ代表品目が5~10あります。
例えば、
①食器陶磁器には食器、陶器置物、食料品、調理用具等
②電気器具類には電子レンジ・オープン、ステレオ・コンポ、パソコン・ワープロ等
③家具類には食器戸棚、タンス、サイドボード等
④見回品その他にはカメラ、メガネ類、書籍、鞄等
問題の認定方法ですが、
例えば、①であれば、損傷品目の数がいくつあるのかがポイントです。
ここで勘違いが多いのが、
食器であれば、食器の破損数が1個でも5個でも、食器としての数は1つなんです。
つまり、品目数が多くないと損害率には影響しないのです。
言葉を変えれば、
「何種類の家財に損害があったのか」が最大のポイントになるのです。
具体的には、テレビだけに損害があり、他は何も損害がなければ、
損害率は2.5%
つまり、補償されません。
ところが、テレビの他に食器(1%)、パソコン(2.5%)、机(4%)に損害があれば、
損害率は10%
一部損に認定されます。
ですので、家財の補償でも
原因が火災・落雷等であれば、購入時期や購入金額が重要ですが、
地震保険では、購入時期も購入金額も全く関係ないのです。
勘違いが多い地震保険
地震保険ほど、勘違いが多い保険はないかもしれません。
具体的には、こんな感じです。
■建物に損害はなかったが、塀にひびが入った
■エコキュートや電気温水器が壊れた
■水道管に亀裂が入った
ほんの一例ですが、上記のような単独損害だけでは、保険金の支払対象外です。
あくまで、建物の主要構造部の損害状況なのです。
地盤液状化の認定は?
今回の北海道胆振東部地震でも、やはり液状化による損害が発生した地域はありました。
尚、液状化についても、認定基準が決まっております。
■全 損:傾斜が1.7/100(約1℃)
または、最大沈下量が30cmを超える場合。
■大半損:傾斜が1.4/100(約0.8℃)を越え1.7/100(約1℃)以下の場合
または、最大沈下量が20cmを越え、30cm以下の場合。
■小半損:傾斜が0.9/100(約0.5℃)を越え、1.4/100(約0.8℃)以下の場合
または、最大沈下量が15cmを越え、20cm以下の場合。
■一部損:傾斜が0.4/100(約0.2℃)を越え、0.9/100(約0.5℃)以下の場合
または、最大沈下量が10cmを越え、15cm以下の場合。
地震保険で建物を建替えする手段はないのか??
通常、地震保険で全損しても、火災保険の50%が上限の保険金額しか出ませんので、同じ規模の自宅を建て替える事は不可能です。
では、本当に不可能なのか?
実は、様々な条件はありますが、火災保険の特約を使う事で建物を建て替える事は可能なのです。
通常、火災保険には、『地震火災費用保険金』という特約があります。
地震等により、建物の損害が半焼以上になった場合に、契約金額の5%が支払われます。
この5%を50%に変更する事で、
■地震保険から50%
■地震火災費用保険金から50%
トータルで100%の保険金が受取れます。
但し、この特約は全ての契約に付帯できる訳ではありません。
保険会社により、制限があります。
例えば、
①建物と家財がセットの契約である事
②昭和56年6月以降新築の建物である事
③地震火災費用保険金の特約がセットされている事
興味のある方は、信頼できる代理店にご相談下さい。
まとめ
私は、損害保険の仕事に携わって20年目ですが、地震保険での事故対応は、今回の北海道胆振東部地震が初めてです。
おそらく、火災保険の実務を経験されていても、地震保険の実務に詳しい方は少ないと思います。
その上で、感じた事をまとめさせて頂きます。
1.地震保険は必要な保険です。
冒頭、地震保険で建物を修復する事はできない旨の記事を書かせて頂きました。
しかし、それでも地震保険は必要です。
地震は誰も想定できません。
そして、地震による損害など、誰も想定できないのです。
ですので、一部損の認定であろうが、僅かな保険金であろうが、貴重な生活再建の為の資金になります。
ですので、加入するべきです。
2.地震保険は建物と家財両方にセットする
今回の地震現場を見て感じた事です。
建物は損害が少ないが、家財がほぼ全損。
しかし、家財は火災も地震も入っていない。
地震保険は建物しか入っていなかった。
こんな契約が多いのです。
しかも現実は、建物は一部修復しなければならないし、家財も買換えが必要。
地震を経験して初めて実感するのが、
「地震の家財は必要」
多くの被災者が感じております。
3.地震保険は途中からでも付帯できます
住宅を新築されてから、地震保険に未加入の方。
更に、途中で失効になり、そのまま放置の方も多いです。
地震保険は「中途付帯」ができます。
遠慮しないで、今からでも準備するべきです。
本日は、「地震保険」について書かせて頂きました。
地震は突然やってきます。
待ってくれないのです。
そして、自分の事、自分の家族を守るのは
「自分」なのです。
『本日にやるべき事は本日にやる』
『明日は誰にも保証できない』
そんな事を感じる、本日です。
地震保険について、更に詳しく知りたい方。
今、入っている火災保険が不安な方は、個別相談をご活用ください。
本日も、最後までお読み頂き、誠にありがとうございました。
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