『知らないと人生を10倍損するお金のしくみ』Vol.134
認知症の親のお金を管理するために覚えておきたい2つの方法
実は、最近、全国の銀行で増えてる事例があります。
そうなんです。
認知症の方のお金引き出しできないのです。
でも、認知症の親の生活費、介護費、医療費
お金はかかるのです。
必要なのです。
しかし、使えない!
認知症患者が急増している事をご存知ですか?
日本国内の認知症患者は、予備軍も含めると約800万人と言われております。
しかも、他の先進国と違うのは認知症有病率(病気を持っている人の割合)が、先進国35ヶ国の中で一番高いのです。
特に、65歳以上になると、有病率が急激に高くなります。
もう、他人事ではないのです。
親が認知症になったときのお金の問題
2018年10月18日付の日経新聞です。
「通帳ない」 1日3回来店
つまり、銀行窓口には
「自分の通帳がない」
「キャッシュカードがない」
「お金の引き出し方が分からない」
そのような高齢者が、1日に何度も銀行に足を運ぶ。
結局、何もできない・・・。
私の銀行時代の実例を1つ紹介です。
■年齢は80歳位の男性
■定期預金の書替で訪問
■いつも、印鑑相違で処理が進まないので
都度、印鑑変更処理を申し受ける。
本人にご記入、捺印頂くも、「俺は印鑑を変えた覚えはない」、「勝手な事をするな」
要は、自分の言動を全く覚えていない。
他人を信用しない。
結果的に、自分の財産を処理できなくなります。
銀行の立場からお話しをするとトラブルには巻き込まれたくない。
あくまで、本人の意思が全て。
書類の本人直筆
印鑑の本人捺印
併せて、印鑑証明書を添付
この3つは、昔から徹底してました。
今思えば、流石、銀行!
つまり、認知症になると、例え本人でも自分のお金が使えない。
このような事態が増えます。
更に、深刻になるのは不動産所有の方。
特に、アパート経営をされている方です。
アパート経営は日々動きます。
■入居者との家賃、管理上の問題
■アパートの修繕、立替等の問題
認知症になれば
■家賃もらった、もらってないでのトラブル。
■そもそも「賃貸借契約」が結べない。
■契約の更新・解除もできない。
■アパートの修繕もできない。
つまり、アウトなんです。
親のお金を子供が管理することはできる?
では、自分の親が認知症になったら、完全にアウトなのか?
実は、認知症になる前と、なってからで子供が管理できる方法もあります。
家族信託
最近、増えてきました。
「家族信託セミナー」
ここで、大事な事は、自分の親が認知症になる前です。
つまり、契約行為になるので、認知症になってしまえば、できないのです。
では、どんな仕組みなのか。
簡単に言えば、親が万一、認知症になった場合は、子が財産の管理・運用・処分できるように契約を結ぶ事です。
これを「家族信託」と言います。
成年後見制度
一方で、昔から運用されていた制度が「成年後見制度」です。
成年後見制度には、民法に基づく
①法定後見と
②任意後見があります。
法定後見は、本人が認知症になってから「家庭裁判所」を通して手続を進めます。
任意後見は、本人が認知症になる前に「あらかじめ後見人になる人を定める」契約。
家族信託のメリット・デメリット
メリット
家族信託には3大メリットがあります。
[メリット1]自分の意思通りに財産管理が可能
本人が認知症になっても、ならなくても自分の意思通りに、財産管理ができる事です。
その内容を、認知症になる前に書面に残し、契約をする事です。
[メリット2]成年後見よりも柔軟且つ自由
成年後見制度は必要な制度である事は事実。
しかし、一方で、様々な制約もあります。
例えば、
①家庭裁判所への定期的な報告義務がある。
②後見監督人への報酬の負担が続く。
③そもそもできる財産管理に制約がある。
つまり、成年後見制度の最大の目的は本人保護です。
本人が誤った判断に基づいてした行為を取り消して本人を保護する制度です。
ですので、制度の運用は厳格であり、ケースによっては、使いづらいのが実態です。
家族信託は、自分の意思を実現できます。
[メリット3]遺言+2次相続までの準備可能
家族信託を使う事で、本来の「遺言機能」である財産承継を、家族信託の契約書の中で指定する事ができます。
更に、遺言ではできない、2次相続以降の財産指定も可能になります。
デメリット
一方で、デメリットもあります。
[デメリット1]節税とは無縁
家族信託により、財産管理は本人の意思通りに遂行する事はできます。
一方で、税金面では注意が必要です。
例えば
①損益通算ができない
アパート経営の方で、不動産収入がある場合、仮に、年間収支が赤字の場合は、他の所得と通算して、所得を減らす事ができます。
しかし、信託財産に入れた場合は、仮に不動産収支が赤字でも、他の所得との合算ができません。
[租税特別措置法41の4の2]
②家族信託自体に税務メリットはない
つまり、法律と税務は全く次元が違います。
言葉を変えれば、家族信託だけでは、節税する事はできません。
ですので、複数の専門家との打合せが必要になります。
[デメリット2]まだ認知不足
実は、家族信託を進める上で、専門家との連携は大事なのですが、もうひとつ欠かせないのが金融機関の協力です。
多くの方は当たり前ですが、金融機関を使われており、特に銀行で財産管理をしています。
しかし、残念ながら、銀行により、家族信託について、理解があり、協力的な銀行と、ほとんど理解されず、対応して頂けない銀行があるのが現実です。
ですので、家族信託を進めるのあれば、まずは自分が利用している銀行が、家族信託の制度に対応が可能なのか、確認が必要です。
[デメリット3]初期費用がかかる
この家族信託の制度は、非常に高度な制度であり、専門家の力は必須です。
一方で、家族信託を熟知している専門家はまだまだ少ない事、更にコンサルテイング費用も発生します。
細かいお話しをすれば、まだまだあります。
大事な事は、何よりも家族間での話し合いであり、コミュニケーションです。
成年後見制度のメリット・デメリット
メリット
成年後見制度は、国で認定された制度です。
ですので、本人が認知症になり、判断能力が失った場合は、最低限の生活環境と財産は守られます。
できれば、元気な段階で、自分の意思を書面に残す事で、後見人も可能な限り、本人の意思を尊重してくれます。
デメリット
成年後見制度の利用が始まると、財産処分に関しては、自分の自由が奪われます。
具体的に言えば
①無駄な支出はできない。
②投資等はできない。
③子供、孫への贈与もできない。
更に、家庭裁判所が関与します。
ですので、毎年、裁判所に報告書を出さなければなりません。
特に、アパート経営の方は注意です。
アパートの修繕
アパートの建替え
できるでしょうか・・・?
その前に、オーナーが認知症になり、家族の方が家庭裁判所に、成年後見人の申立てをしてから、法定後見がスタートできるまでは、一定の期間を要します。
その間のアパート経営はどうなるのか?
入居者との賃貸借契約
契約の更新
退去時の現状回復工事等々
日々、やるべき事は山積します。
FPの身近で起きている実例
夫に先立たれた奥様から相談を頂きました。
その方は、夫が所有されていたアパートを引き継ぎ、年金と賃料収入で生活。
今現在は元気ですが、1人息子は東京に在住している為、自分が認知症になった場合に自宅を売却して、施設に入居しなければならない事、アパート経営はどうなるのか・・・・。
等々考えると不安になりご相談を頂きました。
すぐに、複数の専門家で、打ち合わせ。
今の問題点は
①認知症になった場合のアパートの維持管理
②認知症になった場合のアパートの修繕
③施設に入った場合の費用の支払
④アパートの売却はできるのか
そして、①~④全てに対応できるのが家族信託です。
今後、様々な専門家に相談をしながら進めていく予定です。
家族信託を進める場合については、1人では何もできません。
専門家との連携が不可欠です。
では、誰に相談をすればいいのか?
家族信託普及協会という専門組織があります。
更に、その中で
修了者名簿がHPで公開されております。
まずは、相談されてはいかがでしょうか。
認知症になってからでは遅いのです。
本日も、最後までお読み頂き誠にありがとうございました。
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