「知らないと人生を10倍損するお金のしくみ」Vol.250
「老後2000万円」問題は、冷静に正しく理解しないと、自分が後悔します
金融庁の報告書を巡る騒動が続いております。
ここぞ、とばかりに政府批判を繰り広げる議員もおります。
そして、政治家の言葉を聞いて驚く毎日です。
「この政治家、年金制度を理解されていないのか??」
しかも、金融庁の大事な提言が、年金制度の政治利用にすり替えられている事実。
今は、人生100年時代を迎え、的外れの批判だけをする時期ではありません。
国民の生活を守る真剣勝負の論議が必要なのです。
併せて、複雑な年金制度。
批判をする前に大事な事は2点です。
①年金制度を正しく理解する事。
②今の制度を改善したいのであれば、抜本的な改善案を出すべきです。
*これは、政治家の皆様への苦言ですが・・・。
そして、「老後2000万円問題」の核心は何か?
冷静に考える時です。
100年安心プランのポイントは3つ
年金制度を持続させる事が最優先
人口減少と少子高齢化、併せて平均寿命が延び続ける日本。
このままの状況が続けばどうなるのか?
■現役世代のお金に関する負担が増え続けます。
■老後に必要なお金も増え続けます。
しかし、現実、現役世代の税金・社会保険料を増やす事にも限界があります。
では、どうすればいいのか?
結論は1つ。
年金制度は、国民全員で守る事です。
それを具体的に制度化したのが、2004年の年金改革です。
年金制度を持続させるには、給付と負担の割合を明確にする事。
収入範囲内でしか、支出はしません
今の年金制度は、現役世代の払う、保険料と税金で、高齢者の年金を支えています。
ですので、あくまで、現役世代が払える範囲内でしか、年金の支給はしません、との事。
ここでの更なるポイントが2つあります。
1.現役世代の負担する保険料に上限を設けた事。
*段階的に引き上げて2017年度で固定する。
2.基礎年金の国庫負担割合を3分の1から2分の1に変更した事。
*つまり、将来に亘り税金投入も含め、国民全体で制度を持続させる、とのメッセージです。
3.年金積立金を100年かけて取り崩す。
*安全且つ効率的に運用しながら、取り崩す。
そして、確保した財源の中で、更に給付水準を調整するしくみを導入。
これが「マクロ経済スライド」です。
*簡単に言えば、年金の給付を抑えるしくみです。
受け取る年金は、現役世代の手取り収入の50%を目処に保障します
おそらく、この部分が正確に理解されていません。
つまり、年金だけで生活できる保障はしてません。
年金の給付水準は、現役世代の平均手取り収入額との比較で50%以上を確保する。
これを、法律に明記したのです。(所得代替率)
そして、この所得代替率も公表されています。
■2004年:59.3%
■2014年:62.7%
*2040年代には、50%程度に下がる見通し。
老後の生活費は、1人1人違います。
ですので、国の方針として示したのが
「保険料を負担する、現役世代の手取り収入の50%を保障します」
これが、国の約束であり、国民全員の生活100%保障などしておりません。
金融庁報告の趣旨は、早期からの資産形成が必要だという事
2019年5月22日に金融庁から公表された報告書について。
金融審議会市場ワーキング・グループ
「高齢社会における資産形成・管理」報告書(案)
全部で51ページに及ぶ内容で、流石に5分では読めませんが、30~40分で読む事はできます。
尚、この審議会は、平成30年9月から、計12回にわたり、検討・審議されたものです。
今の日本の現状を冷静に分析され、的を得た大事な提言でもありました。
そして、この報告書のポイントは1つです。
なるべく早い時期から資産形成の準備をしましょう!
老後も安心して暮らすためには、年金だけに頼らず、「自助」も欠かせませんよ。
当たり前の事ではあるのですが、説明不足と言わざる得ないのが
「老後資産が2000万円不足する」
この部分だけが、注目され、炎上されました。
提言内容自体は必要な内容であり、国民全員が認識をするべき提言でした。
しかし、老後に必要な金額は各自違うのに、一律に「2000万円不足」と表現された事が間違いでした。
ですので、非常に残念な騒動となりました。
自営業の方は、真剣に考える時期です
今回の金融庁の提言、騒動を含め、確認しなければならない事があります。
それは、今回の報告書は、あくまで平均的なサラリーマン世帯を対象にしたお話しです。
つまり、自営業の方であれば、根本的に計算根拠が違うのです。
特に、以下の2点です。
■年金制度が違う。
つまり、国民年金であれば、もらえる年金は、満額でも月約6万4千円です。
ですので、厚生年金の半分、もしくは半分以下です。
■退職金がない
つまり、自分で退職金の準備が必要なのです。
ですので、自営業の方で、老後資金の準備をされていない方は、今すぐにでも行動するべきなのです。
老後資金準備のポイントは3つ
ここからは、職業や年収に関係なく、全国民に共通する対策です。
公的年金を上手に使う
老後生活の柱が「公的年金」である事は変わりません。
その上で、大事な事は、年金額を増やす事を真剣に考える事です。
ポイントは2つです。
①夫婦で働き、夫婦で厚生年金に加入。
理想は夫婦で40年間、共働きですが、現実は各世帯での事情もあり、できる家庭は限られます。
しかし、パート勤務でも、厚生年金に加入できる時代となりました。
単純に計算しても、厚生年金加入期間が長ければ長い程、年金額は増えます。
②70歳からの繰下げ請求。
本来、65歳から受給できる年金の受取りを70歳に変更する事です。
「繰下げ請求」する事で、年金額が42%増えます。
この①、②を実現するだけで、厚生労働省のモデル世帯である平均的なサラリーマン世帯の年金額は月22万円から30~36万円程度まで増やす事が可能になります。
ですので、年金だけでも、ゆとりある老後生活を送る事は可能になります。
資産形成は早く始め、長く続ける事
今回、2019年5月22日の金融庁からの報告書ばかりが、クローズアップされてます。
しかし、金融庁は、以前からも、資産形成⇒自助のメッセージは出しています。
■2013年:最低限身に付けるべき金融リテラシーの4分野・15項目
この中で
13)資産形成における分散
14)資産形成における長期運用の理解
■2016年:金融庁の金融レポート
国民の安定的な資産形成の促進:「貯蓄から資産形成へ」
□投資対象と投資時期の分散
・投資対象をグローバルに分散
・積立投資により、リスクの軽減が可能
・長期保有により、リターンの安定化が可能に
つまり、長期・積立・分散なのです。
これが、国からのメッセージなのです。
そして、金融商品も大事ですが、一番大事なポイントは1つ。
早く始める事。長く続ける事。
老後にどこに住むのかは大事なポイント
今回の金融庁の報告書で使われたデータは「2017年の家計調査」です。
その中で、注意が必要なのが「住居費」なんです。
この金額が13,656円です。
しかし、現実はどうでしょうか。
地域により住居費は違います。
更に、持家なのか、賃貸なのか、或いは子供との2世帯なのか。
住み方によっても、住居費は変わります。
私の知り合いでも、同じような公団住宅に入居されている方でも月の家賃が5万円の方もいれば1万円以下の方もおります。
ですので、老後どこに、誰と住むのか。
非常に大きなポイントになります。
更に、持家の方であれば、定期的に外壁塗装や修繕費が発生します。
そのような費用も含めて、老後資金の準備が必要になります。
昨年より、50代の方を中心に、多くの方から、老後資金準備の相談を受けてます。
その際に、必ず確認する事があります。
その方の年金が65歳からいくらもらえるのか。
70歳から繰下げすれば、いくらもらえるのか。
実は、この金額を知る事で、安心をされる方が多いのが現実です。
不安の方の多くは、年金のしくみを知らない事です。
ですので、まずは、自分の年金がいくらもらえるのか。
その確認から始めたらいかがでしょうか。
確認方法が分からない方は、個別相談もご活用下さい。
最後までお読み頂き、誠にありがとうございました。
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