「知らないと人生を10倍損するお金のしくみ」Vol.274
今さら聞けない103万円の壁とは?パート収入はいくらがいいのか?
先日、住宅を購入される方から相談を頂きました。
今後の、住宅ローンの返済を含め、老後資金準備の為にパート勤務を始めました。
奥様から「パート収入は38万円以内に収めた方がいいのでしょうか?」との事。
38万円
103万円
130万円
150万円等々、税金絡みで、様々な金額を耳にします。
多くの方は、数字に振り回され、混同されてます。
では、パートさんの収入はいくらまでがいいのか?
そもそも、103万円の壁とは何なのか?
本日は、徹底解説をさせて頂きます。
103万円の壁の意味
今回は、話しを分かりやすくする為に、登場人物を2名準備します。
■サザエさん(パート勤務)
■マスオさん(サラリーマン、年収800万円)
*2人暮らし、お子様がいない設定です。
税金のしくみ(サラリーマンの所得税)
実は、多くの方が誤解を誤解をされているのが収入と所得です。
収入=年収(純粋に収入の総額)
所得:収入から様々な控除を差し引いた、税金の対象になる金額
サザエさんもマスオさんも給与所得者です。
ですので、お二人の所得税は下記の計算になります。
給与収入(年収)-給与所得控除*1(経費)=給与所得
*1:給与所得控除は一定の金額までは経費として認められている控除です。
給与等の収入金額 (給与所得の源泉徴収票の支払金額) |
給与所得控除額 |
1,800,000円以下 | 収入金額×40%
650,000円に満たない場合には650,000円 |
1,800,000円超 3,600,000円以下 | 収入金額×30%+180,000円 |
3,600,000円超 6,600,000円以下 | 収入金額×20%+540,000円 |
6,600,000円超 10,000,000円以下 | 収入金額×10%+1,200,000円 |
10,000,000円超 | 2,200,000円(上限) |
*国税庁のHPから抜粋。2020年以後は改正されます。
仮にサザエさんの年収が103万円と仮定します。
サザエさんに認められる給与所得控除の計算は下記になります。
103万円×40%=412,000円
*但し、65万円に満たない場合は65万円にできます。
ですので、サザエさんの給与所得は
103万円ー65万円=38万円(給与所得)
次に、給与所得から所得控除*2した金額が課税所得になります。
給与所得ー所得控除=課税所得
*2:所得控除には大きく2つに分けられます。
①全国民が無条件で、一律の金額で控除できる
・基礎控除:38万円
*2020年以後は基礎控除が10万円引き上げられ48万円になります。
②自ら申告をする事で控除できる(以下、主な控除)
・配偶者控除
・扶養控除
・生命保険料控除
・地震保険料控除
・社会保険料控除
・小規模企業共済等掛金控除
サザエさんの税金
結論から言いますと年収で103万円までは税金がかかりません。
103万円(年収)-65万円(給与所得控除)-38万円(基礎控除)=0(課税所得)
つまり、65万円(給与所得控除)と38万円(基礎控除)の合計金額が103万円なのです。
ですので、年間で103万円以内の収入であれば、税金の心配はありません。
マスオさんの税金
では、マスオさんの税金はどうなのかを検証です。
計算を簡略する為に、使える所得控除は配偶者控除のみにします。
年収は800万円です。
800万円ー200万円(給与所得控除)-38万円(基礎控除)-38万円(配偶者控除)
=524万円(課税所得)
課税所得が524万円ですので、税金の計算は、下記のテーブル表でできます。
課税される所得金額 |
税率 |
控除額 |
195万円以下 |
5% |
0円 |
195万円を超え330万円以下 |
10% |
97,500円 |
330万円を超え695万円以下 |
20% |
427,500円 |
695万円を超え900万円以下 |
23% |
636,000円 |
900万円を超え1,800万円以下 |
33% |
1,536,000円 |
1,800万円を超え4,000万円以下 |
40% |
2,796,000円 |
4,000万円超 |
45% |
4,796,000円 |
*国税庁のHPから抜粋
524万円×20%-427,500円=620,500円(所得税額)
では、仮に、配偶者控除が使えないと、税額はいくら変わるのか?
800万円ー200万円(給与所得控除)-38万円(基礎控除)
=562万円(課税所得)
562万円×20%-427,500円=696,500円(所得税額)
696,500円ー620,500円=76,000円(節税金額)
つまり、マスオさんは、サザエさんの年収が103万円以下にする事で76,000円の節税になるのです。
103万円を超えるとどうなるのか
サザエさんの収入が103万円を超えると、2つの影響が出ます。
①サザエさんに所得税が発生する。
②マスオさんの所得税が増える。
では、具体的に検証します。
サザエさんに税金がいくら発生するのか
サザエさんの収入 |
サザエさんの給与所得 | サザエさんの課税所得 | サザエさんの所得税 |
103万円 |
38万円 |
0円 |
0円 |
110万円 |
45万円 |
7万円 |
3,500円 |
130万円 |
65万円 |
27万円 |
13,500円 |
150万円 |
85万円 |
47万円 |
23,500円 |
200万円 |
120万円 |
82万円 |
41,000円 |
マスオさんの税金がいくら増えるのか
サザエさんの収入 |
マスオさんの給与所得 |
マスオさんの課税所得 |
マスオさんの所得税 |
103万円 |
600万円 |
524万円 |
620,500円 |
110万円 |
600万円 |
524万円 |
625,000円 |
130万円 |
600万円 |
524万円 |
625,000円 |
150万円 |
600万円 |
524万円 |
625,000円 |
200万円 |
600万円 |
559万円 |
690,500円 |
サザエさんの収入が103万円を超えても150万円までは影響がありません。
しかし、150万円を超えると控除できる金額が減少します。
ですので、ポイントは150万円です。
ちなみに、サザエさんの収入が200万円と仮定すると、控除の内容が変わります。
■配偶者控除の38万円→配偶者特別控除の3万円
つまり控除できる金額が35万円減る事で、収める税金が65,500円増えます。
配偶者控除と配偶者特別控除の違い
■サザエさんの年収が103万円以下→配偶者控除
*所得金額が38万円以下
■サザエさんの年収が103万円を超え2,015,999円以下→配偶者特別控除
*所得金額が38万円超123万円以下
つまり、サザエさんの年収が103万円を超えても段階的に201万円までは、金額は減りますが控除を認めましょう、との事です。
社会保険との兼ね合い
サザエさんの年収が130万円を超えると社会保険にも影響が出る
例えば、サザエさんの年収を140万円と仮定します。
①サザエさんの税金
140万円ー65万円(給与所得控除)-38万円(基礎控除)=37万円(課税所得)
37万円(課税所得)×5%=18,500円(所得税)
②マスオさんの税金
800万円ー200万円(給与所得控除)-38万円(基礎控除)-38万円(配偶者控除)
=524万円(課税所得)
524万円×20%-427,500円=620,500円(所得税)
ここまでは変わらずです。
ここから先が追加されます。
③サザエさんに社会保険料が発生
<社会保険加入の企業の場合>
基本的には手続きは会社でしてくれます。
例)北海道に居住で平成31年4月基準で試算
・健康保険料:7,103円
・厚生年金保険料:10,797円
合計保険料:17,900円→年間で196,900円
<社会保険に未加入の企業の場合>
この場合は、自分で市町村に出向き、手続きが必要です。
国民健康保険と国民年金の加入と支払いが発生します。
居住地により保険料が決まります。
国民健康保険料と国民年金保険料合計で約30万円程度。
サザエさんの年収が106万円の時も要確認
実は、一定の条件に該当すれば、年収が106万円でも社会保険料が発生します。
以下、厚生労働省のHPより抜粋です。
Q1 以下の項目のうち、いずれか1つでも該当しますか?
□年金や医療保険の保険料を自身の給与から天引きされている。
□現在、学生である(夜間、定時制の方は除きます)
□雇用期間が1年未満の予定。
□現在、70歳以上である。
□勤め先の会社の従業員数(正社員など)は500人以下である。
1つでも該当すれば、社会保険の対象外になります。
全てに該当しない場合は、Q2に進みます。
Q2 1週間あたりの決まった労働時間は20時間以上ですか?
*残業時間は含めません。あらかじめ働くことが決まっている労働時間
(所定労働時間)をご確認ください。
*なお、雇用保険に加入している方は「Q3]にお進みください。
該当する場合は、Q3に進みます。
Q3 1カ月あたりの決まった賃金は88,000円以上ですか?
*賞与、残業代、通勤手当などは含めません。
あらかじめ決まっている賃金(所定賃金)をご確認ください。
該当すれば
厚生年金保険・健康保険の加入対象者になる可能性があります
まとめ
本日の内容は、2019年11月現在の税制をベースにまとめました。
税制も社会保険制度も、毎年改定が行われますので、都度確認は必要です。
その上で、考えるポイントは2つです。
1.目先の手取り収入を増やしたいのか
2.将来の老後資金を充実させたいのか
実は、目的が1か2では働き方自体が変わります。
例えば、将来の老後資金を少しでも増やしたいのであれば、厚生年金に加入して、収入も多い方がいいのです。
併せて、税金を減らしたいのであれば、様々な所得控除があります。
特に以下の4つです。
■社会保険料控除(健康保険料や公的年金保険料が全額控除)
■生命保険料控除(最大で12万円の控除)
■地震保険料控除(最大で5万円の控除)
■小規模企業共済等掛金控除(例えばiDeCoの掛け金が全額控除)
サラリーマンの多くの方は、自分で確定申告をされた事がなく、税金のしくみを理解されておりません。
ですので、使える制度を使わないで損をされている方も多いです。
一度、税金の事、将来の年金の事、老後資金の事をじっくりと考えてみてはいかがでしょうか。
よく理解できない方、不安な方は、個別相談をご活用下さい。
本日も、最後までお読み頂き、誠にありがとうございました。
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