「人生100年時代を笑顔で送るためのお金の法則」Vol.298
繰下げ請求の手続きで気をつけたい5つの注意点
年金の繰下げ請求できる年齢が現行の70歳から75歳に延長されます。
延長の開始は2022年4月以降です。
つまり、原則は65歳請求。
■70歳に請求すれば、42%増える。
■75歳に請求すれば、84%増える。
例えば、厚生年金を65歳から、毎月15万円もらえる方を想定します。
■70歳に請求すれば、213,000円。
■75歳に請求すれば、276,000円。
自分が何歳まで生きるのか、分かれば苦労しません。
分からないから、悩むのです。
長生きする事が確実なら繰下げ請求。
長生きできないなら、65歳の本来請求。
そして、繰下げ請求と本来請求の損益分岐年齢は?
81歳~82歳です。
*税金や社会保険料を考慮すれば、個別の細かい計算は必要です。
年金を増やしたい!
老後生活を豊かに暮らしたい!
その為に繰下げ請求を検討する方は増えそうです。
しかし、そこには、注意点もあります。
そもそも、繰下げ請求がよく分からない方、下記の記事をご参照下さい。
いつから請求できるのか
まずは、65歳の時点から1年以上待つ事です。
つまり、66歳に到達しないと、繰下げ請求はできません。
但し、66歳に到達する前に、繰下げ請求ができなくなる事もあります。
■時期は65歳に到達した日から66歳の誕生日の前日までの間。
■障害厚生年金や遺族厚生年金などを受ける権利が発生した場合。
つまり、キーワードは「障害」「遺族」。
老齢基礎年金と老齢厚生年金は、別々にできる
会社員の方の年金は2階建ての構成です。
■1階は老齢基礎年金
■2階は老齢厚生年金
つまり、繰下げ請求は、同時にもできます。
一方で、別々に、時期をずらす事もできます。
同時に繰下げ請求した方がいい方
①生活に余裕があり、70歳まで就業収入だけで生活ができる方。
②面倒くさい方。
別々に、繰下げ請求した方がいい方
①年金は増やしたいが、生活費も足りない方。
②5歳以上年下の奥様がいて、加給年金をもらいたい方。
加給年金については、下記の記事をご参照下さい。
繰下げしても増えない年金もある
改めて確認しますが、繰下げ請求できる年金は2つです。
■老齢基礎年金
■老齢厚生年金
一方で、この2つの年金に付帯される年金もあります。
その2つをご紹介します。
加給年金は増額されない
そもそも、加給年金とは、65歳の時点で65歳未満の一定の条件を満たした配偶者がいれば、その配偶者が65歳に到達するまで支給される家族手当です。
金額は、年間で約39万円。
■繰下げ期間待機期間中は、加給年金はもらえない。
⇒加給年金は厚生年金とセットだからです。
■加給年金は増額されない。
■全くもらえない事もある。
⇒最大で約195万円(390,900円×5年)
*例えば、70歳の繰下げ請求時の配偶者の年齢が65歳に到達。
■基礎年金だけ繰下げ請求すれば、加給年金はもらえる。
振替加算は増額されない
そもそも、振替加算とは何か?
加給年金は、配偶者が65歳になり、自分の基礎年金をもらい始めると打ち切りになります。
それに代わり、配偶者の年金に上乗せで支給されるのが、振替加算です。
更に、分かりやすく言えば、こんな感じです。
加給年金はご主人に、振替加算は奥様に支給されます。
但し、実際に支給される方は生年月日で限定されます。
「1926年4月2日~1966年4月1日までに生まれた方」
しかも、年齢が若い程、支給金額は少なくなります。
例えば、昭和35年4月2日生まれの方の支給額は、年間で約2万円です。
ですので、あまり神経質になる必要はありません。
■繰下げの待機期間中は、振替加算はもらえない。
⇒振替加算は、老齢基礎年金とセットだからです。
■振替加算は増額されない。
■老齢厚生年金だけを繰下げ請求すれば、振替加算はもらえる。
働いて収入が増えると、年金は減らされる
総務省統計局の公表によれば、2018年の65歳~69歳の男子の就業率は57.2%です。
10年前と比較し、9.4%増加してます。
そして、今後も働く高齢者が増える事が予想されます。
ここでの注意点は1つ。
就業による収入金額です。
年金月額+賃金=47万円(在職老齢年金制度)
*年金月額は厚生年金の報酬比例部分のみ
キーワードは47万円。
*金額は令和2年度の金額。
実は、この部分が複雑で誤解をされている方が多いのです。
■65歳以降、実際に年金を受給していなても、在職老齢年金制度の年金月額の計算式には含まれる。
ですので、65歳の時点で、自分の年金月額がいくらなのか、年金事務所に確認が必要です。
そして、65歳以降、仕事をする事で厚生年金保険料を払い続ける。
年金はもらわない。
しかし、在職老齢年金制度で、年金月額が一部停止か全額停止になる場合があります。
その時は、70歳で繰下げ請求をする際に、停止された部分には、増額率が反映されません。
つまり、42%増える予定が、20%、25%しか増えていない・・・。
ですので、65歳の時点で、一度年金事務所に足を運んでください。
在職老齢年金制度を更に詳しく知りたい方は、下記の記事をご参照下さい。
年金増額により税金等の負担が増える
そもそも、年金には税金がかからない、と思われている方もおります。
しかし、一定の金額を超えると、年金にも税金はかかります。
では、税金がかかるのは、いくらなのか?
ポイントは2つです。
65歳の夫婦2人世帯のケースで確認します。
①公的年金等控除額
65歳以上であれが、110万円までは、所得金額がゼロです。
②基礎控除+扶養控除
■所得税:48万円(基礎控除)+38万円(扶養控除)=86万円
■住民税:43万円(基礎控除)+33万円(扶養控除)=76万円
つまり、以下の年金収入までは、税金はかかりません。
■所得税:110万円+86万円=196万円
■住民税:110万円+76万円=186万円
その他に社会保険料もあります。
■国民健康保険
■介護保険
ですので、繰下げ請求は、増額率だけを判断をするのではなく、税金・社会保険料を控除後の実額で判断をするべきなのです。
特に、今50代の方は、65歳以降の人生をどのように生きるのか、真剣に考える時です。
不安は方は、個別相談もご活用下さい。
本日も、最後までお読み頂き、誠にありがとうございました。
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