「人生100年時代を笑顔で送るためのお金の法則」Vol.324
遺族年金が打ち切りされる!どんなケースで起こるのか?具体例で解説
大事なパートナーを失い、遺族年金により何とか最低限の生活を確保。
しかし、家族状況等により、遺族年金が打ち切りになる事もあります。
大事な生活の基盤がなくなれば、大変な事になります。
では、どんな状況で遺族年金が打ち切りになるのか?
具体例で解説をさせて頂きます。
遺族年金が打ち切りされるケース
お子様が高校を卒業
遺族基礎年金の支給要件は、子が18歳年度末までである事です。
つまり、高校を卒業した3月末で、遺族基礎年金はもらえません。
仮に、お子様が1人であれば、1,006,600円(令和2年度)
月額で約8万3千円の年金がなくなります。
*但し、要件に該当すれば、中高齢寡婦加算が586,300円(令和2年度)が支給されます。
30歳未満で夫を亡くし、5年後の悲劇
夫が亡くなり、妻が遺族厚生年金の受給権を取得した時点で30歳未満の場合、支給期間は5年間になります。
ですので、5年を経過した時点で、遺族厚生年金は打ち切りになります。
何故か?
夫の死亡時に30歳未満であれば、仕事もできる年齢。
再婚もできる年齢です。
『5年間で、今後の見通しをつけなさい』との国のメッセージになります。
ですので、まずは、安定した就職先を探す事です。
妻が再婚をした場合
夫が亡くなった時点で、妻も若ければ、再婚をする可能性もあります。
再婚すれば、遺族基礎年金も遺族厚生年金も失権されます。
但し、妻が再婚しても、子は亡き父との離縁がなければ、子に対する年金の受給権は残ります。
子が養子になった場合
このケースは、子が誰の養子になったかで判断が変わります。
■子が妻以外の養子になった場合:2人以上の子の中で1人だけ養子になれば、妻の年金額は減額されます。
そして、全ての子が養子になれば、妻の権利は失権します。
■全ての子が直系親族又は直系姻族の養子になった場合:妻の権利は失権するが、子の権利は残ります。
■全ての子が直系親族又は直系姻族以外の養子になった場合:遺族基礎年金は妻も子も失権します。
遺族厚生年金は、妻の権利は残るが、子の権利は失権します。
*直系血族とは、具体的に子の立場で見れば、父、母、おじいちゃん、おばあちゃん等です。
このように、特に養子の場合は複雑です。
ですので、遺族年金をもらう際には、失権事由について、日本年金機構のHPで確認された方がいいです。
遺族年金が打ち切りになった場合の救済策は
例えば、夫の死亡時に18歳以下の子がいて、遺族基礎年金をもらっていた、と仮定。
ところが、子が18歳に到達し、無事に高校を卒業。
この時点で、妻が40歳以上であれば、遺族基礎年金に代わり中高齢寡婦加算が支給されます。
支給される期間は、妻が65歳に到達するまでの期間です。
支給金額は586,300円(令和2年度)
失権届の提出が遅れると・・・
もらい過ぎた年金は、後から返還請求・・・
遺族年金は、被保険者から徴収された保険料、一般会計からの国庫負担金等を財源として支給されています。
ですので、適正かつ公平に制度を運用しなければなりません。
しかし、現実は、制度の内容を理解できずに、失権事由に該当しても、失権届を出さずに、遺族年金をもらい続けている方もおります。
ご参考までに、2017年10月に日本年金機構は、会計検査院の指摘により、再婚などで受給資格を失った1,000人弱に、総額約18億円の過払い額を支払っていた事を公表しました。
基本的に、過払いした分は返還請求手続きされますが、既に5年の消滅時効を迎えた分は、請求はできません。
失権届は期限内に提出を
遺族年金を受けている方が、結婚や養子縁組等、失権事由に該当した場合は、「遺族年金失権届」の提出が必要です。
■遺族基礎年金の場合は14日以内。
■遺族厚生年金の場合は10日以内。
まとめ
2017年10月、日本中に衝撃が走りました。
遺族年金を受給している約536万人について、初めて、会計検査院が過払いを指摘。
しかも、金額が約18億円。
単純に、18億円を、過払いの対象となる約1,000人で割ると、1人平均180万円の返還請求になります。
あくまで平均ですので、中には300万円や500万円の返還になる方もいるかもしれません。
中には、収入の減少している老後生活の最中であれば、返還請求は相当厳しいものです。
そもそも、このような事態になった最大の原因は、年金制度が複雑で、失権事由を理解していなかった事で、周知すべき立場の日本年金機構にも多くの責任があります。
一方で、知らなかったとはいえ、もらい過ぎて、返還請求がきた場合は返す義務が生じます。
中には、もう国は信用できない!
お怒りの方も多いはずです。
こうなる前に、自ら年金制度を学び理解するしかないのが、今の日本の悲しい現実です。
本日も、最後までお読み頂き、誠にありがとうございました。
コメント