「人生100年時代を笑顔で送るためのお金の法則」Vol.326
年金の繰上げ請求で生じるデメリットをわかりやすく解説
新型コロナウィルスで生活が苦しく、年金を繰り上げて早くもらいたい。
そんな相談が、年金事務所にも増えているようです。
しかし、制度のしくみを理解しないままに繰上げ請求をすると、生涯にわたり、不利益を被る事もあります。
そんな、繰上げ請求で生じるデメリットを解説です。
繰上げ請求とは
本来の年金請求は65歳が原則です。
この請求時期を60歳以降に早める事。
これを、「繰上げ請求」と言います。
尚、繰上げ請求は60歳以降であれば、いつでも請求できます。
そして、繰上げ請求する事で、年金額が1カ月あたり0.5%の減額になります。
一方で、逆に、年金の請求時期を66歳以降に遅らせて請求する事を「繰下げ請求」と言います。
繰下げ請求の場合は、1カ月あたり0.7%の増額になります。
繰上げ請求と繰下げ請求の実態
厚生労働省年金局が公表してます「厚生年金保険・国民年金事業年報」のデータを紹介します。
2017年度末で70歳の受給権者の年金受給状況です。
国民年金の場合
■繰上げ請求している方の割合は19.7%
■繰下げ請求している方の割合は1.5%
現実は、繰下げ請求よりも繰上げ請求が多いですが、最近は繰上げ請求される方の割合もやや減少傾向です。
繰上げ請求の5つのデメリット
年金額が生涯にわたり減額される
年金を早くもらうと、その分年金額が生涯にわたり減額されます。
ここで勘違いされている方も多いようです。
減額されるのは、65歳まででしょ・・・。
いいえ、一生涯なんです。
では、具体例で検証します。
減額率は、1カ月につき0.5%です。
60歳で請求:減額率は30%。
781,700円が547,190円に減額。
*令和2年度の金額。
つまり、年間で234,510円の減額です。
仮に60歳から年金をもらい、90歳まで生存した場合、30年間で約700万円の減額です。
*2022年4月から、1カ月あたり0.5%の減額率が0.4%に縮小されます。
繰上げ請求は取消ができない
とにかく、目先の収入が欲しくて繰上げ請求した。
でも、冷静に考えると、減額した年金額が一生続く事に不安を感じ、取消したい。
しかし、残念ながらできないのです。
付加年金も減額される
付加年金とは、毎月400円払込む事で、老齢基礎年金の上乗せができる制度です。
しかし、せっかくの上乗せ部分も、減額されます。
例えば、40年間、付加保険料を払った方は、年間で96,000円の増額になります。
この増額が67,200円まで減額されます。
仮に60歳から年金をもらい、90歳まで生存した場合の減額は約115万円。
つまり、老齢基礎年金と合わせて、約815万円の減額になります。
寡婦年金の受給権を失う
寡婦年金は、保険料を納めた期間が10年以上の自営業の夫が亡くなり、10年以上継続して婚姻関係にある妻に対して、60歳から65歳到達までの5年間に支給されます。
本来は60歳から寡婦年金、65歳から自分の老齢基礎年金をもらえるのですが、60歳からもらえるはずの寡婦年金はもらえなくなります。
障害基礎年金が請求できない
障害基礎年金は、65歳以前に初診日がある傷病が対象。
繰上げ請求すると、受給上の年齢は65歳とみなされるので、繰上げ請求後の障害は請求ができません。
ご参考までに、障害基礎年金の受給額です。
■障害基礎年金1級 977,125円
■障害基礎年金2級 781,700円
*金額は令和2年度の金額(毎年改定)
老齢基礎年金を60歳から受給した場合(満額) 547,190円(30%減額)
障害によりもらう障害基礎年金と、繰上げ請求によるもらう老齢基礎年金。
もらえる金額は大きく変わります。
まとめ
人生100年時代。
その生活を支える柱が年金です。
ですので、年金をいくらもらうのかは、非常に重要な問題です。
本来は、20代からイメージを描きながら、準備をするべきなのです。
具体的には、何歳からもらうのか。
いくらで生活するのか。
足りない金額をどのように準備をするのか。
早ければ早い程、効率的に準備ができます。
しかし、残念ながら現実は50代でも、多くの方が自分がもらえる年金額ですら理解されてません。
その結果起きているのは、65歳以降の生活保護の申請。
老後破産・・・。
健康に不安がある方等、一部の方を除き、年金の繰上げ請求でメリットを受けられる方は限られております。
逆に、デメリットが多いのが現実です。
複雑な年金制度。
本来は、義務教育で学ぶべきだと思いますが・・・。
本日も、最後までお読み頂き、誠にありがとうございました。
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