繰下げ請求の手続きで気をつけたい意外な落とし穴

公的年金

知らないと人生を10倍損するお金のしくみ」Vol.287

繰下げ請求の手続きで気をつけたい意外な落とし穴

老後2000万円問題を発端に、年金に関する関心が深まりました。

特に、年金の繰下げ請求は、人生100年時代の大きな武器になります。

知らないと大損です!

 

一方で、しくみをよく理解しないまま、事務的なミスで起こりうる間違い等々。

請求してからでは、取り返しのつかなくなる事もあります。

 

そんな、意外な落とし穴を解説させて頂きます。

 

繰下げ請求のつもりが、本来請求してしまう

「本来請求」とは、原則通りに65歳の時点で年金の請求をする事です。

 

65歳時に本来請求と知らずに書類を送ってしまう

今現在、65歳未満で特別支給の老齢厚生年金を受給されている方や、受給していない方にも、日本年金機構から「年金請求書」の書類が送られてきます。

 

特別支給の老齢厚生年金について詳しく知りたい方は

 

 

繰下げ請求を希望なら、そのまま放置すればいいのです。

しかし、内容を理解しないまま、「年金請求書」を出してしまう。

結果的に、繰下げの予定が、65歳からの本来受給になってしまう。

一度受給すると、繰下げ請求はできません。

 

66歳時以降、繰下げのつもりが、さかのぼって請求をしてしまう

一方で、66歳時以降に「繰下げ請求」をしたつもりが、65歳にさかのぼって請求をしてしまった。

 

例えば、66歳の時点で2つの選択肢があります。

①繰下げによる増額請求(1カ月0.7%×12=8.4%の増額)

②増額のない「年金をさかのぼって請求」→単純に65歳からの未受給分を含めての請求。

つまり、66歳以降は常に選択肢が2つあるのです。

 

■毎月の年金額を増やしたい方は「繰下げによる請求請求」。

■毎月の年金額は変わらず、65歳にさかのぼって、まとめて欲しい方は「増額のない年金をさかのぼって受給」になります。

 

ここでも、知識不足による、勘違いが起こりうるのです。

 

繰下げ請求について、詳しく知りたい方は、下の記事をご参照下さい。

 

年下の奥様がいて、たくさんの加給年金をもらうはずが・・・

加給年金というのは、家族手当とも呼ばれております。

一定の条件に合致した方のみに支給がされます。

 

加給年金の要件

厚生年金の加入期間が原則65歳時点で20年以上。

 

その時点で配偶者が

①65歳未満

②恒常的な年収が850万円未満

③厚生年金加入が20年未満

 

この条件に合致した方に、年額で約39万円が、配偶者が65歳に到達するまで支給されます。

 

つまり、10歳年下なら、約400万円!

 

加給年金についての記事もご参照下さい。

 

 

ところが、繰下げ請求をすると、加給年金がもらえないのです。

 

繰下げ請求と加給年金、どちらを選択すればいいのか?

この場合は、具体的にシミュレーションをされた方がいいです。

 

繰下げ請求をして、男性の平均寿命81歳まで生存された場合

*65歳時点年金月額を15万円と仮定

*単位は円

繰下げ年齢

年金月額(増額分)

年金年額(増額分)

81歳までの増額累計

66歳

162,600(12,600)

1,951,200(151,200)

2,268,000

67歳

175,200(25,200)

2,102,400(302,400)

4,233,600

68歳

187,800(37,800)

2,253,600(453,600)

5,896,800

69歳

200,400(50,400)

2,404,800(604,800)

7,257,600

70歳

213,000(63,000)

2,556,000(756,000)

8,316,000

*筆者が作成

 

加給年金を受給した場合の加給年金累計額

 

配偶者との年齢差

加給年金年額

加給年金累計金額

5歳

390,100円

1,950,500円

10歳

390,100円

3,901,000円

15歳

390,100円

5,851,500円

20歳

390,100円

7,802,000円

*筆者が作成。

 

この2つの表で分かる事です。

■配偶者との年齢差が10歳以上なら67歳以降に繰下げ請求をする。

■配偶者との年齢差が15歳以上なら68歳以降に繰下げ請求をする。

■配偶者との年齢差が20歳以上なら70歳以降に繰下げ請求をする。

 

年金額が増えて、税金、社会保険料も増えた!

65歳で本来請求できる方が70歳で繰下げをすると、単純に、年金額が42%増えます。

*0.7%×60ケ月=42%

 

収入が増えれば、当然、税金や社会保険料にも影響します

具体的には

■税金とは:所得税、住民税

■社会保険料とは:健康保険料、介護保険料等

 

では、どの程度負担が増えるのか?

所得税

所得税については、下記の表を使い、所得金額を計算します。

*控除は基礎控除のみ適用。

 

①例えば、65歳以上で収入が180万円の場合。

180万円×100%-1,100,000円=700,000円

700,000円ー380,000円(基礎控除)=320,000円

 

②70歳で繰下げ請求をして、収入が約256万円の場合

256万円×100%-1,100,000円=1,460,000円

1,460,000円ー380,000円(基礎控除)=1,080,000円

 

年   齢

公的年金等の収入金額の合計額

割合

控除額

 

 

65歳未満

600,000円以下までは所得ゼロ

600,001円~1,299,999円まで

100%

600,000円

1,300,000円~4,099,999円まで

75%

275,000円

4,100,000円~7,699,999円まで

85%

685,000円

7,700,000円~9,999,999円まで

95%

1,455,000円

10,000,000円以上

100%

1,955,000円

 

 

65歳以上

1,100,000円以下までは所得ゼロ

1,100,001円~3,299,999円まで

100%

1,100,000円

3,300,000円~4,099,999円まで

75%

275,000円

4,100,000円~7,699,999円まで

85%

685,000円

7,700,000円~9,999,999円まで

95%

1,455,000円

10,000,000円以上

100%

1,955,000円

 

次に、所得金額に税率を掛けます。

①320,000円×5%=16,000円

②1,080,000円×5%=54,000円

*つまり、繰下げ請求で42%年金額が増え、所得税も38,000円増えました。

課税される所得金額

税率

控除額

195万円以下

5%

0円

195万円を超え330万円以下

10%

97,500円

330万円を超え695万円以下

20%

427,500円

695万円を超え900万円以下

23%

636,000円

900万円を超え1,800万円以下

33%

1,536,000円

1,800万円を超え4,000万円以下

40%

2,796,000円

4,000万円超 45%

4,796,000円

 

住民税

住民税は地域により違いますが、ざっくり所得の10%で計算します。

*控除は基礎控除のみ。

①700,000円ー330,000円(基礎控除)=370,000円

370,000円×10%=37,000円

 

②1,460,000円-330,000円(基礎控除)=1,130,000円

1,130,000円×10%=113,000円

*つまり、繰下げ請求した事で、住民税が約76,000円増えます。

 

健康保険料

健康保険料も地域により違いますので、今回は札幌市で試算します。

札幌市がHPで公表してます、国民健康保険料の目安を使わせて頂きます。

国民健康保険料早見表

条件として、世帯の中に1人だけ所得があり、公的年金以外に所得がない事です。

*あくまで早見表で条件が近い収入層を適用。

 

①収入が180万円、所得が60万円、2人世帯の場合で79,610円

②収入が260万円、所得が140万円、2人世帯の場合で208,720円

*つまり、繰下げ請求した事で、健康保険料が約13万円増えます。

 

介護保険料

介護保険料も地域により違います。

但し、札幌市の場合、所得金額が125万円未満であれば変わりませんので、差はありません。

 

トータルでどの程度負担が増えるのか

結局、所得税、住民税、健康保険料の増額分を計算するとどうなるか?

■所得税増額:38,000円

■住民税増額:約76,000円

■健康保険料増額:約13万円

合計すると、約244,000円。

 

つまり、70歳で繰下げ請求した場合

年金額が年間で756,000円増えます。

 

そして、税金、社会保険料も約244,000円増えます。

ですので、実際増えたのは512,000円。

 

 

増額率も42%ではなく28.4%になります。

 

*実際の計算は、使える控除もあり、各個人で相違します。

 

繰下げできる、と勘違いする特別支給の老齢厚生年金のもらい損ね

特別支給の老齢厚生と老齢厚生は、制度の内容が違うのです。

結論から言えば、こんな感じです。

特別支給の老齢厚生年金は繰下げ請求ができません。

老齢厚生年金は繰下げ請求ができます。

 

皆様の中で、64歳までは収入もあるし、特別支給の老齢厚生年金は今すぐにもらう必要はない。

繰下げして、後から増額してもらおう、と考えるのも普通の考え方です。

 

しかし、残念ながら、繰下げ請求はできないのです。

ですので、請求はしないと損なのです。

 

年金の請求に関する時効は5年です

ですので、仮に勘違いされても、70歳に到達する前に請求をすれば間に合います。

 

そして、仮に70歳間際に請求をすると、5年分の年金が一括で受取れます。

その分、一時所得で税金も増えますので、注意が必要です。

 

このように、そもそも年金制度は複雑です。

一方で、勘違いをして、損をするのは自分です。

 

ですので、早い時期から、年金に関する勉強は必要です。

お近くの年金事務所や社会保険労務士に相談する事も大事です。

 

年金も含めて、将来の老後資金の準備について、不安の方は、個別相談もご活用下さい。

メールを使った「年間FPサポート」が好評です。

 

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本日も、最後までお読み頂き、誠にありがとうございました。

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